イギリスで出会った人(職場編)

私が働いていた日本食屋さんでは、さまざまな人が働いていました。
その中でも印象強いのが、ネパール人の同僚、P君です。
私とほぼ同時期に入ってきた青年で、まだ20歳。一緒に働いている叔父さんの紹介で来たのだそうです。
年齢は違えど、私にとっては同期なので、もう一人のイギリス生まれイギリス育ちのS君も加え、新人三人組として、特別な気安さと心強さがありました。

P君の性格といえば、マンガのような『天真爛漫』そのもの。
いつも同僚から「おこちゃまね」「若いね」といわれていました。
初日、一人でラーメンが作れたとき(ゆでて、スープ入れてトッピングする)、
「みてみて!!マイ ファースト ラーメン!!」
と近くにいる人に見せびらかしていました(笑)。

超素直。

BGMに合わせて鼻歌を歌い、声が大きくなってしまい慌てて口を押さえたり、
日本語を少し覚えて得意げになったり、
紅しょうがを「bensouga」と書いて混乱させるも、自分からみんなに言いふらしたり。
朝は眠くて静かで、ランチ休憩後は元気はつらつ!

子どものよう。いや、学童の子だってそんなに素直じゃないよ、今。

私が「ありがとう」というネパール語をもう一人のネパール人の女の子に教えてもらい、覚えて披露したところ、大喜びで、早速叔父さんに言っていました。
そして後日、「ねぇねぇ(私の名)、これを繰り返して言ってごらん。」突然そう言って、教えてもらったネパール語は……

『豆乳飲むと、骨が強くなる』

豆乳を指差し、「○×△〜!」
自分の腕を力強く見せ、指差し「△○×〜」

……いや、覚えられませんから!!!
「ありがとう」で精一杯でしたから!!!
しかもなんでそのフレーズ!?!?

通りがかりのネパール人の同僚を見つけ、「ほらほら彼に言ってみて!」といわれ、覚えたてのネパール語を言ったものの、同僚もなぜそれを今?みたいな微妙な反応でした。

よく考えると、豆乳って骨強くなるのかな……なんて疑問まで生まれる始末。


ホントに面白い人でした。
よく働くし、楽しいのですが、でも遅刻だけは普段母のようなマネージャーも怒り、叔父さんがいつも保護者として電話させられていました……。


私が辞めることを知ると残念がって、三日前から「残り三日だね」「今日が最後の日だね」「あと三時間だね」「あと一時間だね!」とカウントダウンしてくれたP君。


私が最後の日の終わり、P君は私に言いました。
「君が僕のことを忘れても、僕は君のことは忘れないよ!働き者だし!一回も遅刻しなくてホントにすごいよ君は!僕もこれから生まれ変わって遅刻はしない!!!決めたよ!!!」

聞けば、ここが人生初の「働く」だったのだそうです。


私も忘れないよ!
その素直な性格のまま、がんばれ!若者よ!!